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コンフリクト解消のファーストステップ

マネジメントの難しさの一つとして、コンフリク(対立)にどう対応するかという問題があります。ビジネスパーソンとして組織で仕事をする以上、おひとりさまで仕事をするというわけにもいきません。誰かと仕事をする以上、必ずコンフリクトは発生します。

まずは、コンフリクトの発生を捉えどう向き合うかの最初のステップをご紹介します。

メインストーリー

Agree to Disagree:合意できないことを合意する

師匠ー。どうしたらいいですか。教えてください。
どうしたの? 何か問題でも?

今、新しい社内システム導入プロジェクトをやっているのですが、開発方法で揉めてるんです。今回は開発規模も小さいし絶好の機会なのでアジャイル開発、あ、新しい開発手法なんですけどね、それを取り入れようと思っているんです。でも頭の固いガンコ親父どもが従来の方法でと言って聞かないんです。あれ、完全な嫌がらせですよ。もうパワハラです。反対する理由なんてなんでも良いんですよ、きっと。ただ新しいことが分からないからトライしたくないっていう感情論で反対しているだけだと思います。
なるほど。アジャイルかウォーターフォールかで揉めているわけか。

あ、師匠詳しいですね。ITもイケる口ですか?
注意
アジャイルかウォーターフォールというシステム開発方法論が出てきていますが、今回のテーマとは全く関係ありません。アジャイル=「新しい手法」ウォーターフォール=「従来型手法」で新旧対決をしているという状況判断だけで大丈夫です。
年取ってると多少はね(笑)それで、こう着状態が続いているんだね。従来の方法か新しい方法か、といった問題はどこの組織でも起きる一般的な問題だね。

でも新しいことにチャレンジしていかないと会社としてダメだと思うんですよ。挑戦しない会社に未来はない、です。
なんかカッコ良いこというね。

でも、もう心折れそうです・・。今日もミーティングでずっと否定され続けたんです。こっちもアジャイルのメリットとか、ずっと説明したのに聞こうとしないんですよ。リスクが高いとか、事例がないとか、もう新しいこと何もできませんよ・・
なるほど。深刻な状態なわけか。

明日も朝からこの件でミーティングなんですが憂鬱で・・。合意できるイメージが湧きません。
じゃあ、諦めましょう。長い物には巻かれろ、郷に入りては郷に従え、の精神です。ザッツ・サラリーマン、というのはどうでしょう?

from=“right”]うーーん。ただ将来の会社のためにも絶対トライした方が良いと思うんだよなぁ。ここで妥協すると非効率な開発から一生抜け出せない気がして・・、でも週明けには進捗報告もしないといけないし・・
そこまで想いがあるなら、明日のミーティングをどうするかみんなで考えてみようか。まずはどの開発方法論で行くか、誰が最終的に決定するのか教えてもらえるかな。

最終的には部長ですかね?新しい手法はもちろんリスクも高いので、最低限のリスク認識はしてもらわないと。ガンコ親父はあくまで第三者です。ただ社内でご意見番的な立場なので無視はできません。それが厄介なんです。
それは都合がいい。

え?
ガンコ親父さんが意思決定するわけではないんだよね。じゃあ、まず明日のミーティングのゴールはここを目指せばいい。「Agree to Disagree」だ。

Agree to ・・、なんですか?
Agree to Disagree 直訳すると「合意できないことを合意する」ということだね。意見が対立しているけど、その意見はどちらかが一方的に良いというわけではない、ただお互いの意見が相違していることを認め合う、このことをAgree to Disagreeっていうんだ。あ、ケンタくんは自分の意見が良いと思っているかもしれないけど、まずは前提として、彼らの言い分もきちんと聞く、まずは認めるというところから始めよう。

うーん。仰ることはわかりますが・・
Agree to Disagreeというのはあくまで交渉のスタート地点だよ。最終的な話をしているわけではないんだ。どちらにも、それぞれの正義があるんだよ。まずはそれを認めるんだ。明日は意見が一致していない、この点だけを注意してミーティングを進行してごらん。お互いの意見のどこがずれているかを明確にすることがポイントだよ。明日、説得する必要はない、違いを見つけるだけって割り切れば、明日のミーティングにのぞむ気持ちも楽になるはずだよ。

スタート地点ですか・・、まだまだ先は長そうですね。まずは明日やってみます。
そうそう、まずはトライしてみよう。週明けの進捗報告は、この点で意見が相違しているという観点をまとめれば良いんだよ。意見の相違をどうするかは、また次の機会に考えよう。

解説

なぜコンフリクトマネジメントが必要か?

今回のストーリーは対決編です。コンフリクトマネジメントの領域となります。この種のテーマでは必ずと言って良いほど「Win-Winの関係」にしましょう、コミュニケーションを積極的にとりましょうなどと言われます。それは、もちろん正解です。

ただし、そう簡単に「Win-Winの関係」に持ち込めない、コミュニケーションがうまく取れないから悩むのです。対立にうまく立ち向かい解消するスキルがコンフリクトマネジメントの領域です。

MEMO
対立が続くと上司が飲み会に誘い、お互い腹を割って話そうと持ちかけられることがあります。時に効果的だと思いますが、往往にして、その場だけ盛り上がるが本質的な問題解決に繋がらない、という結末の方が多い印象です。

合意できないで悩むのはもうやめよう

この会議で合意しないと、と思い悩むことはもうやめましょう。もちろん、勝負所では合意が必要ですが、いつも思い通りに合意できることはビジネスの世界ではありえません。そこでの考え方が、ストーリーに出てきた「合意できないことに合意する」という考え方です。

ただし、何も合意できませんでしたー、と終わるのとは違います。冷静に以下のことを心がけてください。

  • 相手の主張は何なのか?
  • 合意できないポイントは何か?
  • 逆に意見が一致するところはどこか?

上記のポイントを会議の中で見極めた上で「このポイントでお互いの意見が相違している」という事実のみを合意してください。冷静に相手の主張を聞いて、今日は説得などはしないと決めると、意外と落ち着いて対応ができるものです。

最後に

コンフリクト解消の第一ステップは「Agree to Disagree:合意できないことを合意する」です。いきなり対決しても勝てませんので、まずは冷静に状況分析の気持ちで臨んでください。もちろん対立せず合意できたら構いませんよ。